

【caravan】物語を身に着ける
隊を組んで砂漠を行くキャラバンの一行に紛れ、吟遊詩人は次の町へと向かいます。
行く先々で彼らが紡ぐ叙事抒情詩は、その土地に生まれて死ぬ土着の人々にきらびやかな異国の情緒を想起させ、まだ見ぬ世界への憧れをもたらしました。
一節(ひとふし)に投げられる木戸銭を生業とし、町から町へ時には越境して別の国へも赴く彼らは国ごとの通貨とは別に、兌換幣(だかんへい)としての銀(SILVER)を身に着けることが常の事。
時にバングル、時にネックレス、時に指輪や耳飾りとして。
彼らにとってシルバージュエリーは、装身具でありつつも、国を跨いだ通貨であり、日銭を蓄える銀行でもあったわけです。
ジュエリーにはハレ(晴れ)の場所を彩るという大きな役割がありますが、半面、日々に続くケ(褻)に寄り添うような用の美があるだろうと、沈思黙考致した次第。
アンティークコインをモチーフにした【caravan】コレクションに使われているコインには150年前に鋳造されたものもあり、既に亡国となった帝国や、統治が変わり無くなってしまった国名がひっそりと刻まれていたりします。
宝石や黄金の様に雅やかな光は放ちませんが、コインに秘された異国の情緒が、身に着ける人の人生の移ろいに彩を添えてくれると思っております。


